正しい接骨院(整骨院)の選び方。危険な接骨院を見抜いて自分の身を守るコツを紹介。
※最初に記載しておきます。著者である私は接骨院(整骨院)の免許を保有しています。現実にその資格を用いて接骨院・整骨院、整形外科等に勤務していた経験があります。今回はそれらの経験から、皆様にとって身近な存在である接骨院(整骨院)の裏話をお伝えするスタンスで投稿します。あくまで私個人の感想です。
なぜかコンビニの店舗数と比較される事の多い接骨院(整骨院)
全国のコンビニ店舗数は約57000件です(2021年1月)。
接骨院(整骨院)の店舗数は約50000件。(2019年1月)
接骨院(整骨院)の数はここ10年で1.4倍にまで増えており、今後も増加していく傾向があります。
家の近所を見回してみるとたしかにその数の多さに気づかされます。
新しく店ができると聞いて、行ってみれば接骨院(整骨院)だった。
何かの店舗の跡に居抜きですぐに店ができたら接骨院(整骨院)だった。
よくあります。
サービスの質はコンビニと接骨院(整骨院)でどう違うか?
我が家の徒歩10分圏内にはコンビニが3件。接骨院(整骨院)は3件あります。
つい最近コンビニが新しくオープンしたので、その直前までは接骨院(整骨院)の方が数が多かったことになります。
また、駅前まで足を進めれば、コンビニの数も5件になりますが接骨院も5件になります。(接骨院はつい最近店を閉めた所もあるため、実際には7件ありました)
統計がすべて当てはまるとは思いませんが、我が家の近所は統計と似たような比率でコンビニや接骨院(整骨院)がありそうです。
ところでそのコンビニ。
セ〇ンとかロー〇ンやミニ〇トップなど、全国展開のお店では日本中どこでも同じような品物が手に入りますし、サービスもほぼ同じように受けられます。とても安心ですね。もちろん運営しているスタッフにより「良い意味でここは他とは違うな」と思わせてくれる店舗もありますが基本的には一緒です。
では接骨院(整骨院)ではどうでしょう。
時折グループで経営している所もありますが、多くは個人経営もしくは2~3、多くても10店舗程度の小さなグループ経営で運営している所がほとんどです。
学校を卒業し免許を得てはいますが、実は学校での知識はあくまで国家試験に受かるためのものであり、学校で学んだ知識は実際の現場ではあまり役に立たないのも多いのが現実です。(後述します)
接骨院(整骨院)の免許を取得するための専門学校の現実
ところで、接骨院にはどういう時に行くでしょうか?
多くは肩こり・腰痛などの身近な症状でしょうか。
そこから派生して「そういえば膝が痛い」とか「足が痛い、しびれる」とか「頭痛がする」等の、病院で相談しにくいモノを診てもらいたくて行くようなイメージでしょうか。少なくとも私が勤めていたいくつかの接骨院(整骨院)ではそうでした。
接骨院(整骨院)の免許取得のための勉強は3年間。その後に国家試験を受けて合格すると免許が与えられます。(柔道整復師免許)
しかしそのカリキュラムの多くは「骨折・脱臼・捻挫」の知識と、包帯固定の実技にあてられます。
あれれ、さきほどの「肩こり・腰痛」「膝の痛み」「頭痛」はどこに?
そうです、ありません。まったくといっていいほど勉強しません。
「でも、肩や腰をマッサージしてくれるし、すごく上手ですよ?」という意見もよく聞きます。
ですがそのマッサージの勉強も、まったくといっていいほどしません。(マッサージの勉強はあん摩マッサージ指圧師が行います)
それはなぜでしょうか。
そもそも接骨院(整骨院)の免許は柔道整復師免許というのが正式名称ですが、その法律には「骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷」を診ることができる。と書いてあります。
当然、国家試験はそれに準じているため、肩こりや腰痛の勉強は一切しないのです。(中には、卒業後に肩こりや腰痛を診ることが多い現実をしっかりと見据えてそれらの勉強をさせてくれる学校もあるようですが、あくまでオマケ。国家試験に受からなければ意味がないので、余力があればやる程度です)
学校では骨折の知識をせっせと詰め込み、包帯を巻く練習をして、卒業後には肩こりと腰痛のためのマッサージをせっせと勉強する。これが接骨院(整骨院)業界の現実だと思っています。
実際にみなさんが通われている接骨院(整骨院)は、何をしてくれるところでしょうか?
多くがマッサージと電気治療ですよね。多くの方は、
保険を使って安い料金で気持ちよくマッサージしてくれるし、先生の人柄も良い(感じがする)から何となく行っちゃうんです。
という気持ちで通っているのではないでしょうか。
それに対しては私も否定しません。(本当は違法性がありそうですけど・・・。)
ところが、以下のような場合はいかがでしょうか。
それでも、安心して接骨院(整骨院)に行けますか?
- 整形外科での勤務時代に実際にあった接骨院エピソード①②を紹介
整形外科で勤務していたことがあります。
そこではドクターと一緒に診察室で、整復(骨折や脱臼でずれてしまった骨・関節を元に戻すこと)のお手伝いをしたり、ギプスを巻いたり、リハビリテーションを行い生活に復帰するまでを見させていただいていました。
他の病院等から患者さんが紹介されてくることも多いのですが、そのなかでも接骨院(整骨院)からの紹介患者さんとお話をするとすごくびっくりすることが多かったです。
何にびっくりするか?
接骨院(整骨院)のレベルの低さにです。
こんな症例がありました 。
接骨院(整骨院)エピソード①
64歳女性。いきつけの接骨院でいつも肩こりと腰痛のためのマッサージと電気治療を受けていた。
ある日、家の階段から落ちて腰を強打。
痛かったのでいつもの接骨院に行った。
そこで院長から、「それは大変でしたね。今からマッサージをしましょう」(ええ!ケガにマッサージとか絶対ありえないんですけど・・・。そんなの授業でも習うんですけど・・・)
接骨院についた時にはかろうじて歩いていたその女性は、強くマッサージをされた後から立てなくなりました・・・。
病院でレントゲンを撮ると股関節骨折(大腿骨頸部骨折)の診断。
そうです、マッサージのせいで「骨にひび」から「完全に骨折」になったんですね。(多分。少なくとも骨折していた可能性は高いと思われます)
転んだ、ひねった等の外傷では、マッサージ等は行わないのが原則です。それを思いっきり無視したことに心底驚きました。
知識も責任感はどこへ行ったのでしょうか。
接骨院エピソード②
これは私の友人が務めていた接骨院の話ですが。
そこの接骨院に、とあるご高齢の女性が通っていたそうです。
ご高齢の女性によくある、骨粗鬆症の診断を受けている方。膝は変形してきていて、歩くのがだんだん痛くなってきていた。
そこの接骨院は昔から腰が痛い、肩が痛いでよくお世話になっていた。
最近では膝も診てもらうようになっていた。(内容は電気治療とマッサージ)
整形外科に通って、骨粗鬆症の薬と膝の注射も行っていた。
ところがある日、整形外科に行った帰り道にその接骨院に寄った時。
膝に注射の跡、絆創膏が貼ってあるのを診た接骨院の院長は、激怒。
なんで整形外科になんか通っているんだ!とのこと。
その高齢の女性は「お薬も必要だと思って・・・」と言葉がやや濁る。その裏には「接骨院にはマッサージしてくれるから通っているけど、症状は改善しないし、やはり薬も必要だと思った」というメッセージが読み取れる。
そこで、接骨院の院長が放った一言。
「注射を受ける金で、私のところに多く通えばいいじゃないか」
「骨粗鬆症の薬なんて何の意味もないんだ(根拠なし)」
とのこと。
もはや言葉もありません。
本当に患者さんのためを思っていたら、こんなこと言えないです。
じゃあ一生懸命通ったらどうなるか。どうせ通ってもマッサージと電気治療だけだし、治るとは思えません。(少なくとも治る医学的根拠はないです)
(加齢による膝の痛みのほとんどは,①身体の使い方の問題 ②筋力不足 ③身体の硬さ ④靴選びの間違い のどれかから来るものと思っています。マッサージと電気治療はそのどれにも効果的とは思えません)
接骨院(整骨院)を選ぶ時代がやってきた。
上記二つのエピソードはいかがでしたか。
どちらも実話です。
国家資格を持っているなら当然の知識が欠落しているとしか思えません。
というかもはや医療従事者や人間として完全にアウトです。
車の運転でいえば、免許は持っているけど赤信号が止まれなのが分からないレベルです。
これと似たようなパターンに
「ぶつけた所を診てもらったが、揉まれて悪化した」
「靭帯の部分断裂だったが、ストレッチされて完全断裂になった」
などのヴァリエーションがあります。
そんな接骨院(整骨院)が、「私の院はスポーツ外傷・障害に強いから皆さん来てくださいね~」などと言って世の中で開業し続けている現実。
びっくりしました。背筋が凍りました。
さらに言えば、これは珍しいことではないということです。
そういう接骨院(整骨院)はとても多いです。
スポーツ傷害でも、単純な腰痛でも揉むことしかしない、できない。また来てくださいねとしか言わない。
野球でもサッカーでも、どんな状態でもマッサージと電気治療で済むなんてありえないですよ。競技特性ってものがりますしね。
こういった所に不幸にも行ってしまった患者さん達は、適切な治療を受けられなかったという意味では被害者だと言ってもいいと思います。
そういった被害者を増やさないためにも、知識による武装は必要だと思います。
単なる肩こりや腰痛だって、場合によっては致命的な病気が隠れていることもあります。
本当に安心して、何でも相談できるような接骨院(整骨院)はどこにあるのでしょうか。
身を守るために、こんな質問をしてみよう
接骨院(整骨院)にこれから通おうとしていて、あるいはいま通っていて疑問を感じているあなた。このような質問を先生にぶつけてみましょう。
早く良くなりたいんですけど、私にできることはありますか?と。
そこで、「たくさん通ってください」とか「ではスペシャルコースで回数券を・・・」等々、受け身で何かをしてもらう内容でしか話ができないようなら、完全にアウトです。
他力で良くなることに関しては、結局判断基準がその先生になってしまうので、自分での努力の場所がありません。しかし、本当に良くなりたいのなら、何かしら本人だからこそできることがあるはずです。(例えば生活上の注意点で、カバンの持ち方やセルフストレッチやエクササイズ等を教えてくれる等々)
もしくは医学的にこんな可能性があるので、これこれこういうことをしてみて難しそうなら、一度病院で精密検査を受けた方が良いかもしれません等々。
そこまでも含めて説明できなければ、患者さんに対して無責任だと私は思います。
きちんと勉強している先生は、それらの知識を基に自分にできること/できないことの線引きをちゃんとしています。
その上で施術者任せではなく、患者さん自身にも気を付けて欲しい事が説明できるはずです。
それがあれば安心して身体を預けられると思います。
何よりも、治療に対する情熱と人間愛があることが分かります。
いい加減な事しか言わない、やらない施術者はそれらが欠落しています。結局うまく治せないから、施術者に全て任せてくださいとしか言わないのです。
良くなるためにはどんな事が必要かきちんと説明できる。いろいろな医学的な可能性もきちんと視野に入れた話ができる。そして手に負えないもの・危険なものはちゃんと患者さんに説明する。
あなたがこれから通おうとする接骨院(整骨院)の先生はそれらが備わっているでしょうか?
まとめ
- 危険な接骨院(整骨院)が多く存在すること
- どのような症状であっても「マッサージや電気治療、骨盤矯正等、受け身なことしかしない」のは危険信号であること
- それらを見分けるために「どんなことをしたらよいか?」と聞いてみること
患者さんのためを思えば、でたらめな事はできないはずなんです。
皆さんが良い先生に出会えることをお祈りしております。