こんな方に読んでもらいたい

  • 最近、肩が痛くて動かしにくい
  • 肩の痛みで目が覚めたことがある
  • 肩の痛みでマッサージ等を受けているが改善が見られない

五十肩。日常的によく遭遇する症状です。

日本整形外科学会によると五十肩とは、

肩関節が痛み、関節の動きが悪くなります(運動制限)。とのことです。

また、動かす時に痛みがありますが、あまり動かさないでいると肩の動きが悪くなってしまいます。

髪を整えたり、服を着替えることが不自由になることがあります。とも書いてあります。

痛みについてはもう一つ記述があります。

夜の痛み

という項目です。

夜中にズキズキ痛み、ときに眠れないほどになることもあります。とのことです。

実際の現場では、この夜の痛み(夜間痛)で苦しんで病院等にかかる方が多いような印象です。

そのような方にお話しを聞くと、皆さん声をそろえて「夜も眠れない」「どうにかしてくれ」とおっしゃいます。

実際に、五十肩と向き合う際にはこの夜間痛さえ乗り越えてしまえばまずは一安心、というイメージさえあります。

なぜ五十肩になるか

前述の日本整形外科学会によると

中年以降、特に50歳代に多くみられ、その病態は多彩です。

関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱などが老化して肩関節の周囲に組織に炎症が起きることが主な原因と考えられています。肩関節の動きをよくする袋(肩峰下滑液包)や関節を包む袋(関節包)が癒着するとさらに動きが悪くなります(拘縮または凍結肩)。

と記載されています。

実際にその症状は多彩であるため、五十肩の症状は人それぞれと言っても良く、むしろ五十肩という一般的な名称のせいでひとくくりにされていることの弊害を感じずにはいられません。

ではまずはレントゲンを。
→骨に異常なしと言われました。でも痛くて困っています・・・。

というのは病院ではよく見かける光景ですね。それ自体は大きく否定はしません。

ただし、これは知っていた方がいいと思うのです。

五十肩は、レントゲンではほぼ写らない。

五十肩の症状を引き起こす病態名をいくつか挙げておきます。

烏口突起炎、肩峰下滑液包炎、上腕二頭筋長頭腱炎、ローテーターカフ損傷・炎症、腱板粗部損傷・・・etc

このなかで、レントゲンで分かるものは・・・

ひとつもありません。(補助的に使えるものはありますが)

そして、病院では痛み止めの薬とシップを出されて終了ということも多く、途方に暮れてしまう方が一定数出てきてしまいます。

まずはレントゲンを撮って骨に異常がない事を確認して、あとは症状の具合から「まあ、五十肩でしょう」となる場合が多いと感じています。

しかしそもそも五十肩を引き起こす病態のほとんどがレントゲンに写らないという、やや矛盾を感じる部分でもあります。

ちなみに上記に挙げた病態はMRIだと写ります。

五十肩になると、どのように治っていくのか?

一般的な五十肩の方であれば以下のような典型的な経過を辿ることが多いです。

①急性期(最初の特に痛い時期。夜痛くて眠れない、痛みで目が覚めて寝不足になる等、つらい時期です)

②慢性期(一番痛い時期は過ぎたけれど、今度はだんだんと固まってしまい肩の動く範囲が狭くなってくる時期)

③回復期(もう痛みは無いか、あってもごくわずか。日常生活を送る分にはほぼ問題なし。高い所のものを取る、吊革につかまる等が難しい時期)

だいたい上記のような経過を辿ります。ただし気を付けなければならないのは、その3つの時期が均等に訪れてはくれない、ということです。

①の急性期が長引いてしまうこともあれば、あっという間に過ぎることもある。だいたい発症してから1か月の印象です。

②は急性期後の3か月程度の印象です。

③の回復期はさらにその後6か月~1年程度といったところでしょうか。ただし、もう当初のような地獄の苦しみはかなり薄れているため、症状を忘れて過ごしている方も多く、中には治療をあきらめている方もたくさん見られます。

いろいろな経過を辿る方がいますので一概には言えませんが、発症から治療終了(本人が満足するまで)を適切に診させていただいて早くて1か月、長くて1年程度(頑固に可動域制限が残っていたりする場合)といった経過の方が多い印象です。

治療はどのように行うのか?

では実際に治療はどように行われるのでしょうか。

①の急性期には炎症のコントロールが大切です。

五十肩の治療はここで大部分が決まると言っても過言ではありません。

それはなぜでしょうか。

五十肩には1.炎症(痛み)のコントロール 2.可動域の確保

が大切です。

最初の炎症がうまくコントロールできないと、その後で可動域が減少していってしまうため、最初のコントロールが肝心になるのです。

当然ですよね。

痛くてどうしようもない → 肩を動かさない → 固まる → 治りが悪くなる

というイメージです。

五十肩初期の痛みのコントロール方法

先に、五十肩には最初が肝心であると述べました。

では具体的に何をするのでしょうか。

肩の関節は、とても繊細な構造をしています。

よく例えられるのはゴルフボールとピンの関係です。

ゴルフボールは腕の付け根(上腕骨)の部分、ピンは肩の付け根(肩甲骨)の部分として考えます。

小さな接触面でボールが支えられています。その不安定さといえば、ゴルフクラブが空振りした時のようなわずかな風圧でさえポロリと落ちてしまうくらいです。

実際の肩は周囲にある小さな筋肉たちで前後左右から支えられているため、ポロリと落ちるようなことはありませんが。

ですが、いわゆる五十肩ではこの写真のようなきれいな位置関係が崩れてしまうことが多いと考えられています。

肩の関節がいつもと違う位置にあれば、それは動かしにくくなりますし、痛みも出やすいし治りも悪くなると考えるのも当然です。

ですので、急性期、それも夜の痛みが強く出ているケースではこのボールとピンの関係をできるかぎり優しく正常に近づけるような働きかけが重要となります。

それは、電気治療やマッサージでは難しいことが多いです。

具体的には、肩を痛みの出ない範囲で少しずつ動かします。(気を付けの位置からちょっと脇が開く程度の範囲。)

痛みによって正常な骨の位置関係での動きが難しくなっていますので、脱力してもらって施術者側がゆっくり動かすようにします。

慣れてきたら少しだけ力を入れてもらったりしながら、正常な動き方を身体に思い出させるように、ゆっくりと動かします。

これだけです。

動かす範囲は気を付けの位置からちょうど写真のペンギンくらいの範囲まででしょうか。これ以上動かすと痛みが出てきてしまうことが多く、最初は「これだけ?」程度で十分なことが多いです。

まとめ。痛みさえ落ち着けば・・・。

最初の痛みさえ落ち着けば、あとは皆さん穏やかに過ごされることが多いです。

あとはストレッチと肩周辺の筋トレをゆっくりやっていけば良いかと。

最初に適切なコントロールをされないと、痛い時期が長引いたりして非常につらくなってしまいます。

適切な治療を受けられて、生活への影響が最小限になりますように。